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 日頃僕たちは何気なく「死ね」、という言葉をよく聞きます。とはいっても、現在の高校生の間では、ですが。
 ふざけて言っているのは分かります。いつだって僕たちは口から放つ見えない刃を相手に突きつけています。言葉は不意に人の心を傷つけてしまうことが多いです。
 例えば、冒頭にも述べているように「死ね」、と言われたとき、僕たちはどう考えますか。そんなことスルーしてしまう、と思う人がほとんどでしょう。あくまで、ほとんどです。ほとんどに含まれない一部の人たち――僕も含め――は相当なショックを受けます。
 僕は笑ってごまかします。死ねとか言うなとか言えません。別に単なる悪口くらいなら耐えられる心だと思うので大丈夫。だけど「死ね」はない。その言葉は、要らないや不必要だなどというニュアンスでよく使われます。実際「死ね」という言葉は、重いはずだった。軽軽しく口には出していけません、そう子供の頃から教えられたはずだ。
 話が小難しくなってきた。少し違う論点から言葉の価値を見てみたい。
 嘘。僕はよく嘘をつきます。悪意や善意とか小さいものではなくて、存在自体の嘘。偽りの仮面を被って、人間関係を滞りなく過ごしている。これは相手への配慮などではなく、自分に嘘をついて相手に同意するとかだ。自分を表に出さないで、裏からじっと見守る。けれども、人とは明るく礼儀正しく接するのだ。過去に僕の本質を見抜いた奴がいた。僕の体中に塗りたくられた嘘や偽りを透かして、僕の内面へと口を出し、手を伸ばしてきた奴だ。いつも明るくフレンドリーで話しやすい僕なのに、そいつだけは僕に「大変そうだな」と一声かけるんだ。周りの奴は僕の作り話に興味津々と言った形で楽しそうに聞いている。そんな場違いな、異空間で。
 やっぱり小説を書くためには嘘も必要。むしろ嘘ばかりででっち上げたものが小説なんだから。この場合の小説はライトノベルなどの若い世代向けのものだが。直木賞受賞作品でもいい、芥川賞は純文学すぎて読み込めない。嘘話もそうだね。人を楽しませることが出来る。
 そうやって過ごしてきた、今も。
 そいつの話に戻ろう。僕はそいつと修学旅行で一緒の班になった。当時、班長などを進んでやる僕は迷わず立候補、班長は僕に決定。人望がいい。もちろん表だけの。そいつは僕の作り話を適当に聞き流していたので、話を無茶振りしてやったのだ。そしたら、なんと。嘘話の続きをダイジェスト版にして返してきた。確かにそうだ、その通りだ。そのストーリー僕が考えたものだ。何故、分かったのだろう。これはその日の夜に分かることになる。
 ディナークルーズで船酔い気分の僕はいつもの明るさを保てず、半分仮面がずり落ちたまぬけな雰囲気で僕という存在の輪郭を曖昧にさせながら、ホテルの自室へと戻る。すでにそいつはいた。ちなみに僕吐いた。
「げろでまくり。俺も死にそうなんだけど」
「そう」
「……げろ出すとさ、死にそうになんない?」
「げろで死なない」
 実に面白みのない会話だった。相手が無口クールな美少女なら黙って眺めていたものの、いや場の雰囲気に合わせて、「楽しいか?」とか聞いているだろうな。
 消灯時刻はとうの昔に過ぎ去っていた。僕たちも、まあ三人部屋でそいつ以外の友人とテレビ見てたんだな。東京は毎日深夜番組でアニメがやってるそうで、朝の四時まで見たものだ。それで、そいつは、寝てないんだよ。だけど、テレビ見ないで布団に包まっていた。
「寝ろよ」
「俺はテレビ見てんだ。お前こそテレビ見ないで何やってんだよ」
 そんな会話が一時間おきに続いた。
 三時頃になると話の方向は変わっていた。
「議題、女子を落とす方法」
「……」
「zzz」
 そいつだけは俺の話を聞いていた。
 俺も話し相手一人に頑張ったと思う。
 不意にそいつは口を開いた。
「どうせ作り話だろ」
「ああ、作り話だ。そう思って聞いて構わない」
 作り話や嘘と言われたら否定してはいけない。ありえない話をありえそうな話として話すことで、注意を引き、作り話という前提で盛り上げる。もちろん中学生らしくえっちなこと中心に。
「よく思いつくね。将来噺家にでもなんの?」
「いんや、小説家。話すのは苦手でねー」
 最初は本当。後は相手も自分もわからない潜在的部分だろう。
「サイとは、みんなと一緒にいないと寂しかったりすんのか」
「さぁね。誰もいない方がさっぱりしてていいよ」
「嘘だな。お前、人のいる方向に行くじゃん」
「たまたまだ。つーか、お前そんなに俺のこと見て、おっ襲わないでよねっ」
 夜だからこそのハイテンションから回り気味。
 自分の本質が見抜かれそうになったらすかさず話を逸らす。たまに上手くいかないときもあるが、臨機応変。
「俺はああいうちやほやのされ方は嫌いだ」
「嫉妬かい? ま、人それぞれなんだから別にお前には関係ねーよ」
 眠くなってきた。
 だんだん投げやりになっていく。
「そうか。じゃあ、独り言だと思え。いいか。お前はいつかその内面を暴露する。そして、ピークを迎え、最後は何も残らない。おやすみ」
 その言葉が本当になるなんて知る由もなかったので、そのときの僕は眠気との狭間でしか聞いていなかった。そいつには「おやすみ」は言っていない。

なんだ? タイトルの意味なんぞ?
言葉の価値?
えー、どうしよ。逸れちゃったし、まあいいか。
おやすみー

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