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かわいいからいいけど///

買い物に付き合った。
アベイルっていう服屋さん。
初めて入ったよ。なんか服以外にも靴とかサイフとかも売ってた。なんか、しまむらの傘下企業らしく、おねだん以上だった。
とりあえず、今日の出来事をノンフィクションで書こうか。

   ◆   ◆   ◆

 午前10時、待ち合わせまであと30分だ。
 うん、間に合う。超余裕。
 俺は安堵の息を漏らそうにも心が躍っていて、ゆっくり安心なんてできなかった。一応だが、自分チェックはじめ。
 服装……Gパンはイタリアのブランドかなにか。ベルトは福島だったか栃木だったか覚えてはいないが、イタチの仲間の毛皮を取り扱っている店でばあちゃんに買ってもらった牛革。イタチ似の、うーん、……ムンク? 白いシャツはコンバース。赤と白のチェック柄の上着はリービズ(?)。パンツはフィラ。ばっちりである。
 サイフ……なかに1500円くらい入っている。昨日、コンプティーク買ったせいで金が足りない。こなたキャビネットは正直要らん。サイフはチェーンでベルトを通すひもんとこにつないである。
 家の鍵……チャラチャラ言わせて、サイフと反対方向にぶらさげてある。学校のロッカーとかも混じっているので、少し重い。
 携帯……あの子のアドが入ってる。マナーモードにしないでおく。いつもマナーモードのせいで気づきにくいのさ。
 メガネ……どこだ? 机にもない。PCの前にもなければ、洗面所にもない。ダイニングにもこたつにもはたまたメガネケースの中にもない。付けてたっ!
 髪……最近、切ったばかり。短過ぎる程度。
 顔……アウト。
 歯……歯並びさえ気にしなければ大丈夫。
 目……悪い。
 ……おし、行くぜ。
 15分ごろに家をでる。アベイルまでは10分くらいでつくから計画通りである。アベイルに行く途中、彼女からのメールがくる。内容を確認。
《台本持ってきてくれ》
 あー、ギャルゲのね。
 彼女には声優を頼んでいるのだ。高卒の後、家を継ぐと言っているが、俺はそんなことしてほしくない。彼女は声優になりたいという夢があるらしいのだ。俺は小説家になりたいし、大学だって東京の大学に行くつもりだ。だから、俺は彼女を連れて上京したいと考えている。彼女はそこで、声優の専門学校に通えばいいと思う。娘のために出せるお金ならあるだろう。できれば同棲もしてみたい、なんて。
 とにかく俺は返信する。
《台本はまだだ。
 シナリオしかできてない》
 まだ完成度10%もいってないんだよ。
 んで、その返信には把握したらしいのでアベイルへ急ぐ。
 アベイル到着。誰もいない。そこで少し待つと、メールが一通来ていることに気づいた。
《自転車の鍵が見当たらない
 すまん、遅れる》
 ドジっ娘乙。
 俺は頭の中で必死こいて鍵を探す姿を思い浮かべながら、もだえていた。メシウマなわけなのです。
 店内でパララバを読む。もちろんブックカバーはしている、狼と香辛料のホロがプリントされたやつだけどなw
 彼女到着。本をしまいつつ後を追う。俺はここでちゃんと彼女を観察しておくべきだったと後悔することになるのを知らなかった。
 んでいろいろ見る。
 服屋とか一年以上行ってないわけで、もしかすると俺は場違いなんじゃないかと心配になる。俺はメイトとかゲマズとかがお似合いなはずだ。
 視界の縁に彼女の姿を視認するだけで、手汗がナイアガラ噴出だった。
 そこから彼女の後ろをついて周ること20分くらい(もっと短かったかもしれない)。俺はゲームキャラの服装について調査にふけっていた。なるほどなるほど。
 少し飽きてきたのは30分くらい経ってから。
 携帯で部員にメール送ったりして40分。
 ジャージみたいな服を見つけて、なにか自分にあった空気を見つけて60分。
 もう11時半だった。
 彼女は服を一着買った。お、これで帰れると思ったら、また服売り場の方へ行ってしまう。
 まだ買うのか……orz
 12時頃、彼女を発見。俺はなんとはなしに近づいてみると、色彩鮮やかなブラジャー(?)の群れにいた彼女を見てしまう。まずい、いきなり女物のエリアではないか。顔の表面が火照るような気がしてソッコー小物売り場へ逃げ込んだ。
 小物売り場にはサイフやベルトがあった。バッグとかもクラスのイケてる系男子(男子校だから男子しかいないけど)が持ってるようなものばかりだ。クラス構成としては池面は窓際に群れているので、その対極側にいるのはいわゆるヲタ系やネクラ系などのインドアーズのたまり場だ。その廊下最前線、いちばん端にいるのが俺なワケだけど。彼女いてもそこは覆せないようだった。どうでもいいが、俺は30歳で魔法使いになれない人間なので、周りとは違うんだぜーって思わせたいのかもしれない。いやリアルに童貞っていう設定で学校生活は送るけどね。敵を作りたくはないのだよ。
 ……彼女が俺のそばにいた。しゃがんで、チェーンを覗いている。指輪みたいなのとかロザリオっぽいのとか。
「ねえ、さいとう。これとこれ、どっちがいいと思う?」
 訊かれたよ。訊かれちゃったよ、まるで恋人みたいだ! 夢かも知れん。だが、俺のことは苗字で呼ぶのだよ残念ながら。いや、いいや名前だと気絶するかも知れん。
 俺が答えようとすると電話が掛かる。彼女は電話に出て、会話中。会話終了。俺は手前のチェーンをゆびさして答えた。
「ほう」
 それの説明を加えながら、カゴに放り込んだ。なんかよく分からんが、うれしかったのは事実だ。
 指輪みたいなのも二人で選んだ。そのとき、お互いの手が触れ合いそうになってドキリとした。俺だけがとても緊張しているみたいだな、と思ったけど、彼女のほうも少しおっかなびっくりに手を引っ込めていたように見えた。体中熱いです……。
「キラキラしてるとカラスに襲われるなぁ」
 彼女がぼそり。
「大丈夫だよ、あ~……」
 俺もぼそり。
 守ってやるよとか言いたかった。
 そのとき、彼女の髪にキラリと光る髪飾りが目に入った。来るときは気づかなかったけど、なんか違和感。そうか、彼女が髪飾りなんてつけることは珍しいのだ。うん、中学のときも告白する前もこんな青色の石が輝いている可愛らしいヘアピンなんていちどもなかった。
 自意識過剰かもしれないけど、もしかしたら今日のためにわざわざ? まさか、とは思いつつ、なにか言葉を探してみた。
「どうしたの髪飾り?」
 やっと出た言葉は文脈が狂っている。
「あー、これ、100円100円」
 いままでぼそぼそな口調だったのに、はっきりと聞こえた気がした。100円だからなんだよ。100円だから、安いから可愛くないとか言いたいのか。そんなことない。少しオシャレしてきた君は十分俺の心を締め付けているよ。
 なんか言えよ俺。なんか言え、なんか!
「カラスにやられちゃうかもナ……」
 orz
 バカス俺。だめじゃん。この後に俺が守るとも連携できたのに!
 それからアベイルでの買い物は終わった。
 そう、――アベイルでの、だ。
 となりにはシャングルというお店がある。正直、名前はうろ覚えで、ジャングルとかシャングリラとかしか頭に浮かんでこなくて、それを口走りそうになっていた。
 まだ買い物か……。
 男は女に待たされる、というのは本当らしい。
 でも彼女はすぐ戻ってきてくれた。だって、シャングルってファンシーなの多いじゃん。俺とか異物以外の何者でもないお( ´・ω・`)
 帰ることになった。
「このあとどーすんの」
 俺の問い。
「んじゃぁ……」
 めし食いに行こうと誘え俺!
 カラオケでもいいぞ俺!
 彼女が先に口を開く。
「……帰るか」
 なんか言えよ――――――――ッッ!!!!!
 しかもなんか少ししょんぼりしたような声だったし。
「そう、だな」
 俺も首肯しつつ、ちゃっかり反対意見を出さなかった。
「じゃあな」
 彼女は帰ってしまった。
「んじゃ」
 俺も帰ることにした。
 帰りのセブンイレブンでうどんを買う。昼飯だ。負け丼にしてやらぁ。
 レジの手前、携帯が鳴る。この曲……まずいっ!
 
 ♪とゅりまはぁキミを近ーくでだれより感じぃたぁい♪
 
 俺の周りには背の高い男の人と、その妻と幼女二名。
 携帯、ポケットだ。早く取り出せ。慣れないGパンなんてはくから、携帯が上手く取り出せない。

 ♪ひとみぃとじてぇ、すなーおなきもちで♪

 まてぇ、幼女がこっちを見てる。目が合ったもん……かわいいなぁ……。

 ♪きしめえええええええええええええええええええええええええ♪

 俺きめぇ。
 男の人と女の人がこっち見てます。やめて、その視線痛いから。
 邪気眼を開眼させ俺は無心に帰ることにし、さっさと負け丼を買って帰ったのだった。
 彼氏はキモ面、ずばりヲタク。
 彼女は美少女、じつは腐女子。
 それなんてエロゲなカップリングの恋路は始まったばかり――

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