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土曜日、一日だけで完成。
文章練習のためだけに書いたようなもの。
伏線がうまいとか言われたけど、しらね。
よければ感想書いてくださいね♪

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キーワード「台風」「ピアノ」「シンクロ」

いちおうい
     っ
     と
     く
     駄作だわ。

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キーワード「台風」「ピアノ」「シンクロ」

いちおうい
     っ
     と
     く
     駄作だわ。

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ほれー!
これが僕の書いた小説じゃー!!

http://ncode.syosetu.com/n9226e/


うわっやっべ・・はずかしっ///

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ほれー!
これが僕の書いた小説じゃー!!

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うわっやっべ・・はずかしっ///

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 三六〇度みわたすかぎりの青、蒼、碧。
 くま並に大男な船長が溺愛するフェリー〈ちゅらかーぎー〉でゆられること約三時間、俺たち新堂学園一同は紺碧の海に浮かぶ巴島に上陸した。島のほとんどが青々とした天然林で、蒼空の下には星の砂があるビーチや、断崖絶壁に流刑されたそうりょの怨念が込められたほら穴もある。アヴァンチュールどころか、命がけの大冒険ができそうだ。
 もちろん、命がけの大冒険などはだれものぞまず、少なくともレイ以外に平穏な宿泊学習が幕をあけた。

「レイちゃんっ、日焼け止めクリーム塗らなきゃ!」
「い、いいよぉ~。あかり、やっあっ、くすぐったいって、なんでさっきから足のうらばっかり! ……ひゃっ」
「むぐー……レイちゃん、意外とムネおっきい」
 背中からぐるりと手を回して、現在女になった俺のムネをもみ始める。あかりのホルターネックでも分かる大きめなそれが背中に当たっていて、俺はからりとした暑さなのにじわじわ流汗。この前の一件いらい、あかりとはよく話をするのだが、どうやら今日はトコナツのバカンスでハイテンションらしい。そうだと俺は信じたい。
「こらこら、あかり。レイの夫にもうしわけないでしょ」
 一緒にいた別の女の子が俺の一命をとりとめる。半分くらいなにか失った気はしたが。
 あかりはごめんごめんとあやまりながら、にやにやしている。
 というか、夫って誰よ。
「もう、鈍感なんだから(堤防の方にゆびさすあかり)」
 ゆびさした先の堤防にたたずむ影は、今しがた俺を助けたますらお、甲賀だった。俺は甲賀と数秒目が合ってしまったが、甲賀はガンをとばすわけでもなく、ただ決まりが悪そうにうつむく。甲賀のやけに大きいネックレスが灼熱の日輪に輝いた。
「ねっ?」
 『ねっ?』じゃねえ。甲賀は男だぞ。あ、今の俺は女だからいいのか。いや、そんな問題じゃない。
 俺は旅行前に兄貴からもらったビキニ(兄貴のではないハズ)を着用している。どうしてこの水着は、こんなに面積がせまいんだ。これではかくすべきところがかくし切れないじゃないか。
「あのさ、あかり? 私、泳がないでシャツ着てまってるから、日焼けクリームいらないんだ。だから、みんなで泳いできていいよ」
「そっかぁ、愛しのダーリンと新婚旅行か」
「だ、ダーリンって! そんなんじゃないってば!」
「はいはい、お幸せに~」
 一番幸せなのは、お前らだろ。とは、言わないでおいた。
 少し大きめのTシャツを着て、俺はパラソルの日陰から海であそぶ同級生をながめる。海に流される確率一〇〇パーセントの水着なんて……まさか、グラビア撮影用か?
 俺はそそくさとひとけのないところへ亡命したのだった。

 大きく生長した天然林は激しい日差しをやわらかい木漏れ日に変え、散歩には丁度いい。やさしいそよ風に力強く伸びた夏草がゆられ、俺はあふれる緑の香りをしんこきゅう。伝わるものは手つかずの自然がもつ生々しい命、広漠たる心。
「もう、女のままでもいいかぁ」
 無意識に心の声がこぼれる。
「ほんとに、女のままの方がいいなー」
 ああ、俺もほんとにそう思うよ。俺も、だと?
 突然、じんせん風が目の前に発生し、土や落ち葉を舞い上げる。舞い上がったそれらは、おもに俺の頭に降りつもる。落ち葉降る先、低身長な人影。
「兄、貴……?」
「ハーィ、レイ。ほら、カメラカメラ」
 じんせん風から現れたそいつは、下半身を土にうもれさせ、「ラブアンドピース」と一眼レフかまえてつぶやいていた。
 私立新堂学園の校長であり、俺の兄である伊藤智樹は〈伊藤家の嘱託〉でもある。ちなみに〈伊藤家の嘱託〉とは、魔法を使ったアルバイターのことだ。魔法を使える血筋を持つのは伊藤家しか知らないが、たぶん他にもいるんだろう。智樹は学校の校長をアルバイトしている。でも、俺は少女にならないと魔法が使えないから、伊藤家なのにアルバイトができない。俺はいわゆるデキソコナイだった。
 兄貴は地面から足を引きぬいて、俺の体を上から目線でしげしげと眺める。
「転送魔法、しっぱいしっぱい。ところで似合ってるぞ、俺の水着」
「あ、ありがと」
 それでも〈伊藤家の嘱託〉なのか――って、この水着、兄貴のだったのか!? なに、しおらしい返事してんの俺?
「全く、ケータイ壊すなんてどじっ娘だね。おかげでこっちは、大混乱だよ」
「……こっち?」
「いやいや、こっちの話」
「……こっち?」
「いやいや、こっちの話」
 俺、生きて帰れるかな。
 唖然して、遠くに目をやるとそこには甲賀の姿。もし、甲賀が兄貴に見つかればだたではすまない。それに、兄貴が手駒探しをしていることもわすれちゃいけない。なんとかせねばっ。
 俺は兄貴のそばに駆け寄り、厚いむないたに身体を任せて、
「お兄ちゃん、私、私ね。お兄ちゃんの、およめになりたいの……」
 甘い声で言うと、兄貴は動揺したようで心臓の高鳴りや荒い鼻息、一眼レフまで地面に落とした。
 名づけて〈ギャルゲー主人公作戦・智樹タイプ〉! これで、甲賀のことは兄貴に見つからない。おまけに、兄貴の嗜好まではあくできるという一石二鳥。これからは、軍師レイと呼ぶがいい。
「レイ、僕もキミをおよめにしたい。けど――」
 兄貴は、一眼レフを離して空いた両手で俺を抱きしめる。俺は兄貴の左手を背中で強く這わせるような感覚に、自身の顔が青ざめるように感じた。これでは、見てしまった甲賀も気落ちするかも知れない。なにより、これはスキャンダルなのだろうから。
「――隠し事はイケナイと思うよ。レイちゃんっ?」
 背中に回されただけの兄貴の右手が細かく動き、
「アムネ・マリアーレ」
 つぶやき終えた一刹那。
 俺から向かって右側、空を切る音とともにあおむらさきのビームが茂みの向こうの甲賀を射る。
 甲賀っ……!
 俺は目を閉じて心の中で甲賀の回想シーンに突入していたが、甲賀が倒れる様子もなくなにごともなかったように去っていった。それから、もう一度兄貴が抱きしめようとするからアッパーカットをぶちこんだ。さて、どうして兄貴の魔法は呪文だけで発動できるのか小一時間問い詰めたい。
「どうやら、奴は対魔法の道具をもっているらしい……。僕の催眠魔法がはね返された」
 対魔法の道具じゃなくて、あのギンギラギンのネックレスではね返っただけじゃないか? もし、対魔法の道具をもっていたら、俺の〈時間を止める魔法〉から脱出できるだろうからな。
 そのあと、ぶつぶつなとなにかつぶやきながら兄貴もこの場を去った。なにしに来たんだ、あいつ?
「戻るとするか」
 木々たちがよからぬ予想をささやきあうように、夕風にゆれていた。

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 三六〇度みわたすかぎりの青、蒼、碧。
 くま並に大男な船長が溺愛するフェリー〈ちゅらかーぎー〉でゆられること約三時間、俺たち新堂学園一同は紺碧の海に浮かぶ巴島に上陸した。島のほとんどが青々とした天然林で、蒼空の下には星の砂があるビーチや、断崖絶壁に流刑されたそうりょの怨念が込められたほら穴もある。アヴァンチュールどころか、命がけの大冒険ができそうだ。
 もちろん、命がけの大冒険などはだれものぞまず、少なくともレイ以外に平穏な宿泊学習が幕をあけた。

「レイちゃんっ、日焼け止めクリーム塗らなきゃ!」
「い、いいよぉ〜。あかり、やっあっ、くすぐったいって、なんでさっきから足のうらばっかり! ……ひゃっ」
「むぐー……レイちゃん、意外とムネおっきい」
 背中からぐるりと手を回して、現在女になった俺のムネをもみ始める。あかりのホルターネックでも分かる大きめなそれが背中に当たっていて、俺はからりとした暑さなのにじわじわ流汗。この前の一件いらい、あかりとはよく話をするのだが、どうやら今日はトコナツのバカンスでハイテンションらしい。そうだと俺は信じたい。
「こらこら、あかり。レイの夫にもうしわけないでしょ」
 一緒にいた別の女の子が俺の一命をとりとめる。半分くらいなにか失った気はしたが。
 あかりはごめんごめんとあやまりながら、にやにやしている。
 というか、夫って誰よ。
「もう、鈍感なんだから(堤防の方にゆびさすあかり)」
 ゆびさした先の堤防にたたずむ影は、今しがた俺を助けたますらお、甲賀だった。俺は甲賀と数秒目が合ってしまったが、甲賀はガンをとばすわけでもなく、ただ決まりが悪そうにうつむく。甲賀のやけに大きいネックレスが灼熱の日輪に輝いた。
「ねっ?」
 『ねっ?』じゃねえ。甲賀は男だぞ。あ、今の俺は女だからいいのか。いや、そんな問題じゃない。
 俺は旅行前に兄貴からもらったビキニ(兄貴のではないハズ)を着用している。どうしてこの水着は、こんなに面積がせまいんだ。これではかくすべきところがかくし切れないじゃないか。
「あのさ、あかり? 私、泳がないでシャツ着てまってるから、日焼けクリームいらないんだ。だから、みんなで泳いできていいよ」
「そっかぁ、愛しのダーリンと新婚旅行か」
「だ、ダーリンって! そんなんじゃないってば!」
「はいはい、お幸せに〜」
 一番幸せなのは、お前らだろ。とは、言わないでおいた。
 少し大きめのTシャツを着て、俺はパラソルの日陰から海であそぶ同級生をながめる。海に流される確率一〇〇パーセントの水着なんて……まさか、グラビア撮影用か?
 俺はそそくさとひとけのないところへ亡命したのだった。

 大きく生長した天然林は激しい日差しをやわらかい木漏れ日に変え、散歩には丁度いい。やさしいそよ風に力強く伸びた夏草がゆられ、俺はあふれる緑の香りをしんこきゅう。伝わるものは手つかずの自然がもつ生々しい命、広漠たる心。
「もう、女のままでもいいかぁ」
 無意識に心の声がこぼれる。
「ほんとに、女のままの方がいいなー」
 ああ、俺もほんとにそう思うよ。俺も、だと?
 突然、じんせん風が目の前に発生し、土や落ち葉を舞い上げる。舞い上がったそれらは、おもに俺の頭に降りつもる。落ち葉降る先、低身長な人影。
「兄、貴……?」
「ハーィ、レイ。ほら、カメラカメラ」
 じんせん風から現れたそいつは、下半身を土にうもれさせ、「ラブアンドピース」と一眼レフかまえてつぶやいていた。
 私立新堂学園の校長であり、俺の兄である伊藤智樹は〈伊藤家の嘱託〉でもある。ちなみに〈伊藤家の嘱託〉とは、魔法を使ったアルバイターのことだ。魔法を使える血筋を持つのは伊藤家しか知らないが、たぶん他にもいるんだろう。智樹は学校の校長をアルバイトしている。でも、俺は少女にならないと魔法が使えないから、伊藤家なのにアルバイトができない。俺はいわゆるデキソコナイだった。
 兄貴は地面から足を引きぬいて、俺の体を上から目線でしげしげと眺める。
「転送魔法、しっぱいしっぱい。ところで似合ってるぞ、俺の水着」
「あ、ありがと」
 それでも〈伊藤家の嘱託〉なのか――って、この水着、兄貴のだったのか!? なに、しおらしい返事してんの俺?
「全く、ケータイ壊すなんてどじっ娘だね。おかげでこっちは、大混乱だよ」
「……こっち?」
「いやいや、こっちの話」
「……こっち?」
「いやいや、こっちの話」
 俺、生きて帰れるかな。
 唖然して、遠くに目をやるとそこには甲賀の姿。もし、甲賀が兄貴に見つかればだたではすまない。それに、兄貴が手駒探しをしていることもわすれちゃいけない。なんとかせねばっ。
 俺は兄貴のそばに駆け寄り、厚いむないたに身体を任せて、
「お兄ちゃん、私、私ね。お兄ちゃんの、およめになりたいの……」
 甘い声で言うと、兄貴は動揺したようで心臓の高鳴りや荒い鼻息、一眼レフまで地面に落とした。
 名づけて〈ギャルゲー主人公作戦・智樹タイプ〉! これで、甲賀のことは兄貴に見つからない。おまけに、兄貴の嗜好まではあくできるという一石二鳥。これからは、軍師レイと呼ぶがいい。
「レイ、僕もキミをおよめにしたい。けど――」
 兄貴は、一眼レフを離して空いた両手で俺を抱きしめる。俺は兄貴の左手を背中で強く這わせるような感覚に、自身の顔が青ざめるように感じた。これでは、見てしまった甲賀も気落ちするかも知れない。なにより、これはスキャンダルなのだろうから。
「――隠し事はイケナイと思うよ。レイちゃんっ?」
 背中に回されただけの兄貴の右手が細かく動き、
「アムネ・マリアーレ」
 つぶやき終えた一刹那。
 俺から向かって右側、空を切る音とともにあおむらさきのビームが茂みの向こうの甲賀を射る。
 甲賀っ……!
 俺は目を閉じて心の中で甲賀の回想シーンに突入していたが、甲賀が倒れる様子もなくなにごともなかったように去っていった。それから、もう一度兄貴が抱きしめようとするからアッパーカットをぶちこんだ。さて、どうして兄貴の魔法は呪文だけで発動できるのか小一時間問い詰めたい。
「どうやら、奴は対魔法の道具をもっているらしい……。僕の催眠魔法がはね返された」
 対魔法の道具じゃなくて、あのギンギラギンのネックレスではね返っただけじゃないか? もし、対魔法の道具をもっていたら、俺の〈時間を止める魔法〉から脱出できるだろうからな。
 そのあと、ぶつぶつなとなにかつぶやきながら兄貴もこの場を去った。なにしに来たんだ、あいつ?
「戻るとするか」
 木々たちがよからぬ予想をささやきあうように、夕風にゆれていた。

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リボンを結んで
 
「ケーキワンホールね!」
私は宣言した。絶対負けないって。
クリスマスイヴの夜、私はこの町に住む子供達にプレゼントを渡す。それがサンタ学園の卒業試験だ。制限時間はクリスマスの日の出まで。意外と少ししか時間がない。
でも、あいつは大事な試験を、
「卒業試験で勝負しよう、もちろん点数の低いほうが負けだ。敗者は勝者の好きなものを一個だけプレゼントすること。『何でも?』あぁ、命だってオーケーだ」
遊びかなんかにしか思っていないのか。あと、命は要らん。それでも、私はあいつの話に乗って宣言をしたワケ。あいつと話すと何故か宣言ばかり、今回だってあいつは学年一位の生徒会長、対する私は学年中位の生き物係長。月とすっぽん。勝ち気になっても、勝てる保障はどこにもない。
そんなこんなで学校上空、サンタ魔法〈マイルド〉のおかげでこの吹雪の中、長いポニーテールを凍らさずにソリで天翔る。サンタに生まれてよかった。
もうすぐ着くでしょとか、戻ったらさっさと寝ようとか、ケーキは明日でいいかなとか考えていたその刹那――
突然の下降気流、私は一気呵成に飲み込まれた。吹き降ろす気流と同じ速度以上で落下。ソリは着陸準備中だったため低空飛行だった。墜落するのは時間の問題だ。そう考えている時間さえ惜しいと感じる程、速い。トナカイ操縦用手綱を掴む手が緩む。
落下することに恐怖を感じ、逆さの体育館が含まれる視界はシャットダウン。
しかし、その恐怖は一瞬だった。
左前から何か宙を舞う重い物同士の衝突音、私の落下運動が緩やかになる。瞼によって光を遮断した目をゆっくり開くと私の左隣にあいつがいた。
あいつは軽く溜息を吐いた後、
「心配、かけんなよ」
あいつは緩まった手綱を操縦し直しながら、呟いていた。
ところでこれは私のソリ、あいつ、じゃなくて彼のソリが見当たらない。
「ソリは……」
「おう、死んでなかったか。ソリは、落とした」
嘘吐くな、知らん振りしたってもう手遅れなのに。
私は羞恥心があるのに、何故か嬉嬉する顔を俯けた。すると、目に飛び込んできたのは彼の右腕から真紅が滲み出ている様子。制服の右袖は引き千切れ、白い部分はもう微塵もない。
「血が!」
「あぁ、ぜんぜん。な、何して『止血』? 重傷じゃねぇよ、俺は」
バカ。右手が止まっている。勝手に人を助けて、強いふりなんてしなくたっていいじゃない。強がっても手遅れなのに。もう私の心は変えられないんだからっ。
そう思いながら彼の右腕にリボンを結んで止血する。
いつの間にか吹雪も晴れて、私の長髪は校舎上空から差し込む月光の中を自由に棚引いていた。
 
翌日、つまりクリスマス。
卒業試験は全員合格したし、しかも私がトップになった。……一位になった訳だが、そんなに喜ばしくない。理由は簡単、怪我までして助けた彼が私を庇護したせいで最下位だったからだ。正直に私が悪いと言えば良かったのに。あと、卒業したら彼とは会えなくなるかもしれない不安も理由の一つに数えてもいい。
ところで、ここは購買部の店先、まだ入店はしていない。傍から見れば冷やかしだ。
さて、親切なことにこの購買部はデザートとしてケーキも置いている。私と彼は卒業試験の勝負で宣言したことを実行しに来ていた。
「はい、それで好きなケーキは何ですか?」
胸の中を泡が埋め尽くすような苦しさ。
それより彼、敗者だからって、敬語使わなくてもいいだろうに。冷静を保とうと突っ込んでみたが、効果はいまひとつのようだ。
ならば素直に答えよう。
「モカケーキ」
「モカケーキか。俺も好きだぞ」
まただ、いや違う。今度は心臓が高鳴る。そうか。『好き』って言葉に反応していると分かったとたん、言葉が心に突き刺さる。さっきまでの苦しみは、まるで泡が弾けたように消えてなくなり、心に砂漠が現れる。熱い。
彼は、いや、親しみを込めて言おう。改めあいつ。
あいつは店内に入ろうとした。私はあいつの袖を強く掴んで離さなかった。どこにも行かせない。でも、これじゃ不自然だ。私は脳内のあらゆる所から言葉を探し、紡いで文章を組み立てる。
「怪我、治ったでしょ。だっ、だから昨日のリボン返して」
思い切りかんだ。舌の回らない自分に少しイラつく。
「あぁ、すまない。返してなかったな」
激しく刻む十六ビートの心臓はとことん耳障り。
あいつはしっかり畳まれたリボンを私に差し出した。
私はそれを受け取った。次いで、あいつの左手をとった。あいつに触ること、こういう状況下に置いては初めての行為だった。手、大きいな。
「私いらない、ケーキ。だからさ。代わりに、さ」
私は少し震える声を元に戻して、涙目は無理そうだけど体の震えを止めた。舌も回るように心の準備も整わせ、高潮する顔は抑えられないけどできるだけ前を向いた。
そして私は、あいつに言ってやる。
リボンを結んで

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 夢だったら良かった。
 明日は氷点下になるらしい、と喜久水庵の店内を映しながら天気予報で。喜久水庵は俺の地元の有名和菓子メーカーだ。ここの抹茶入りどら焼き『どら茶ん』は俺の大好物ベストスリーにランクインしている。
 それを見た後、さっさと寝たよ。何せ明日は土曜日だ。金曜ロードショーなんか何回も見たようなアニメか海外のSFの陳腐ショーだ。エディー・マーフィーが出てれば別だけどな。
 こうして、ベッドまで辿り着いたのだが、シーツが湿っていた。目で見てすぐ分かるほどだった。
 なんだこれ?
 まさか雨漏りか? 天井を見るが、白一面に白熱灯の暖かな光を帯びているだけだった。
 じゃあ、ションベン漏らしたか! 高校生になってまで漏らす奴がどこにいる。もしいたら、世界地図製造工場に就職しろ。職安だ。一応言っとくが我が曽宮家は動物は金魚のみだ。その他家族構成は寝る前に紹介している暇はない。
 ホントに何なんだ。ここは匂いだな。己の本能がそう言っている。間違いない。しかし、毒物かもしれない。ここは、科学の『発生した気体は手で仰いで嗅ぎましょう』に則っとることにする。
 俺は少しベッドに顔を近づけて手で仰いでみた。
 あまーい香りが鼻の奥の合流地点に突き刺さる。例えるなら、? 分からん。初めてだ。こんなに動悸が起こる感覚に……
 その時、俺はどうなってんのか、知る由もなかった。

 こんな濡れたシーツは要らん。今日はシーツなしで寝ることにした。
 そして、シーツを取り終えるとぐっと疲労感が沸いてきた。
 こうして、俺は自室のベッドに吸い付くように倒れこみ、消灯。やっと睡魔が襲い始めた頃だった。
 自分のではない動作で起こる布擦れの音がした。折りたたみベッドの下からだった。
「おにーちゃんっ」
 妹だ。秘密話をするような小声だった。つか、何故俺の部屋に居るんっ……どぁ!
 抱きつかれた!
「あたしの。しぃつとったんだ?」
 あたしの? 否、あれは俺のシーツだ。心を落ち着かせるブルーのシーツは俺のだぞ。一つ、思ったんだがこの展開はエロい。正直面白い。友達の持ってるエロゲーみたいだ。くそ、あの主人公が少し羨ましく思えた。
 妹が俺の首に腕を回して俺は下敷き状態。少し、からかってやろうと思った。寝ぼけるのにも程度っつうのがあるのだから。本当に少しだけの筈、だった。
 俺は妹を抱き返した。
「ふすぅぅ」
 妹の息が漏れて、布団を伝わり首元に当たる。妹との距離がさっきより縮む。もうゼロ距離。
 さっきから妹の描写をできないのは暗いからだ。視覚以外でなら、描写は可能なので今からまとめて述べる。
 聴覚の耳。これは、うめく声。なんか、風邪の時みたいな息遣いでいやらしい。こういうのを喘ぐって言うのだろうか。
 味覚の舌。馬鹿、こんなの使ったら二度と親とは会えん。ちょっと、気になるから唾液がいっぱい溜まってきているんだけど。
 触覚の肌。大事なポイントは、絶対に触っとらん。妹の軽くて薄い胴を支えているだけだ。胸の感触は柔いとでも言ってやろう。俺のチェストが妹のバストと密着しているから、わかることだ。凄いな俺の妹。髪を撫でた感触も子供とは思えないほど細かくさらさらしていた。
 嗅覚の鼻。甘い匂いがした。特に妹の体の方から。髪の匂いはいつでも嗅いでいるから、この際嗅がんでいい。邪魔だ。気になる。
 好奇心なのか悪魔の囁きなのか、はたまたどちらもか、俺の手は妹の魔の三角ゾーンを目指していた。触っていいのか? 保健体育の先生は「もし触られそうになったら逃げるか、叫べ」とかなんとか。叫ばれたら困る。その時だった。
「おにぃ……ちゃん。いい、の、ほんと……に?」
 俺の体が驚きのため波打った。
「ホントごめん。俺が悪かった!」
 小声だけど、謝罪。どうか嫌いになるな。人に言うな。
 ありったけの思いをこめて発したコトバ。
「くうくう」
 寝ていた。今のは寝言か? 寝言なのか! マジ、こいつ、襲いてェッ!
 ぐらんっ。
 睡魔だ。妹を抱く手で時計を取り、よからぬ行為を犯そうとした手でライト兼アラームストップボタンを押す。――〇時二〇分。もう、明日じゃん。
 俺は淀んだ夢ではないが夢のようなヒトトキから、レム睡眠に突入した。

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