『きみにしか聞こえない―CALLING YOU 』を読んで

きみにしか聞こえない―CALLING YOU (角川スニーカー文庫) (2001/05) 乙一 商品詳細を見る

評価：惜作

◆基本データ
著者：乙一
イラスト：羽住都
出版：角川スニーカー文庫
初版：2001/05
ジャンル：現代、ファンタジー

◆評価
総評：惜作
総点：４６
ストーリー：７
文章：７
キャラ：３
意外性：１
世界観：４
テンポのよさ：４
オリジナリティ：５
ネーミング：４
背景：７
イラスト：５
その他：ラノベ？

◆あらすじ（amazonより抜粋）
せつなさの達人・乙一の、珠玉短編集！

私はケータイを持ってない。なぜなら、私には友達がいないから。だから毎日空想をして、憧れ続けていたある日。頭の中に鳴り響いた美しいメロディ。それは、同じさみしさを抱えた少年からのSOSだった……。



内容（「BOOK」データベースより）
私にはケイタイがない。友達が、いないから。でも本当は憧れてる。いつも友達とつながっている、幸福なクラスメイトたちに。「私はひとりぼっちなんだ」と確信する冬の日、とりとめなく空想をめぐらせていた、その時。美しい音が私の心に流れだした。それは世界のどこかで、私と同じさみしさを抱える少年からのSOSだった…。(「Calling You」)誰にもある一瞬の切実な想いを鮮やかに切りとる“切なさの達人”乙一。表題作のほか、2編を収録した珠玉の短編集。

◆書評
買った理由は友人に乙一ファンがいたから。
ブクオフで１０５円だったので気軽に買えた。

三話編成なので一話ずつ書評します。

Calling You
この作品自体２００１年刊行という古いものだから、その後に内容がたくさんパクられていることがよくある。そのパクりの方を先に読んでいた俺はどこかの作品に似ているなぁという気持ちを抱えながらこの短編を読み終わった。
読んでる最中に展開が読めた。しかし、あえて展開を分からせてじわじわと切なさを表現していく方法は王道だ。切ない系にはもってこいの手法なので言及しない。
主人公の頭の中の携帯、というのは当時斬新な設定として思われただろう。２００１年といえばまだ携帯が二つ折りでも画面が小さいやつだった気がする。あと電池がスグ切れる。結構、その頃と比べて携帯のスペックは違えど学校という異世界は変わらないのね。こういうのも多くの人が読むきっかけとなるのだろう。大衆向けというものに近いのかな。
構成はしっかりとできていて、非常に安定した気持ちで読み進める。

傷――ＫＩＺ／ＫＩＤＳ――
これまたどこかｄ（ｒｙ
個人的にこの短編集でいちばん好きだった作品。
やさしい物語、……と抽象的に答えても仕方ないなのでささっと答えると、心の傷はちょっとやそっとじゃ癒せない、だろうかね。
この世に生きてる人間は傷だらけで生きていて、まだまだ傷に対して弱い小学生にその傷はあまり深過ぎた。
主要人物の境遇から暗い話ではあるけど確実に復活を目指した作品。なにかショックなことなどで心が疲れた人、傷ついた人向けにこの作品を読むといいだろう。なぜかといえば、失恋ソングを失恋したときに聴いて心が癒える、というのと一緒だからだ。
主人公がかなり大人びていたので本当に小学生なのかと疑問に思ったが、歩んできた人生が辛いものだったので大人びたのだろうね。

華歌
……俺の書いた作品とかなり被ってるー。時期的に俺がパク・リーじゃないか。
と、それは於いておこう。
文章が堅い。主人公が男かどうか一瞬分からなくなる。もうラノベじゃない。
読みながら挫折しそうになった。
ちょっと今、乙一について調べてきたんだけど、切なさや繊細さを基調としたのが今作だね。いや、まあ繊細だとは思ったけど、なんかここまで分かりやすくされると飽きる。

全体的に。
この人、作品パターンを知っている人だ。ある程度のパターンを知っていれば多くの作品を書ける。その上、なにかに偏った作品にはならない（書き方ではなく、展開など）。書き方も一般的だった。
なんかもうなんかおなかいっぱいだお。