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シュガーダーク  埋められた闇と少女 (角川スニーカー文庫)シュガーダーク 埋められた闇と少女 (角川スニーカー文庫)
(2009/11/28)
新井 円侍

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◆基本データ
著者:新井 円侍
イラスト:mebae
出版:角川スニーカー文庫
初版:2009/11/28
世界観:ファンタジー、墓地
主要人物:少年、少女、幽霊、化物
ジャンル1:ボーイ・ミーツ・ガール
ジャンル2:ファンタジー
キーワード:スニーカー大賞受賞作、囚人、墓守、カラス、モグラ、闇、人間の天敵
対象:一般向け

◆あらすじ(amazonより抜粋)
えん罪により逮捕された少年ムオルは、人里離れた共同霊園に送られ墓穴を掘る毎日を送っていた。そんなある夜、自らを墓守りと名乗る少女メリアと出逢う。彼女に惹かれていくムオル。だが謎の子供カラスから、ムオルが掘っている墓穴は、人類の天敵・死なずの怪物“ザ・ダーク”を埋葬するものだと聞かされる!混乱するムオルは、さらにダークに殺されるメリアを目撃してしまい―!?第14回スニーカー大賞大賞受賞。

◆評価
総評:良作
総点:77
ストーリー:9
文章:7
キャラ:8
意外性:6
世界観:9
テンポのよさ:8
オリジナリティ:7
ネーミング:8
背景:8
イラスト:7
その他:角スニ大賞受賞6年ぶり
◆書評
 角スニ大賞と聞いて。

 素直に面白い。
 他のレビューサイトや感想ブログなどを拝見していると「角スニ大賞にふさわしくない」「期待はずれ」など険のある言葉や気落ちしたコメントが多いように感じました。
 内容に触れておきます。

 要はラブストーリー。世界観がファンタジーだからと言って、別に冒険するわけでもなく少女を好きになった男が少女のために何ができるか考えたり、少女のことを考えて悶え苦しんだりします。

 悪との戦いに苦しむ少女を助けるために男は身を犠牲にして助けます。
 もちろん二人は結ばれてエンドとなるのですが、それより先の展開はまだ不明です。

 ラブストーリーと言うほどお互いに恋愛関係を持たないので、ボーイ・ミーツ・ガールと言った方がジャンル的には適切だろう。
 他に上げたファンタジーは物語において存在感バリバリの圧迫感や緊張感を与えてくれます。そんじょそこらのボーイ・ミーツ・ガールとはワケが違います。この作品の舞台は墓地でしかも閉塞された環境、荒廃した世界。それらの読者に与える雰囲気がこの作品の一番素晴らしいところだと思います。また、その雰囲気とストーリーはお互いにうまく混ざり合っているので素直に面白いとしか言いようがありませんでした。同じく、文章はけっこうあっさりした書き方なのですが、描写の密度が高い(描写量が多いと言うことではなく)ので、1ページ読むのに頭に入ってくる情報量が他のラノベと比べると多いです。
 このような絶対安定の基盤の上でキャラクターもとい登場人物たちのもどかしくて切ない物語は展開されていくのです。

 重要な登場人物は3人。

 ムオル
 主人公です。冤罪をかけられ囚人となってしまいます。性格は比較的おとなしく、この世界では年相応の精神ですが、内に秘める情熱は熱いです。

 メリア
 ヒロインです。囚人ではありませんが、墓守をしていて、この墓から出ることを許されません。人生で墓から出たことがなく、彼女と同年代でしかも異性と話すことは初めてでした。ゆえに接し方が分からず苦悩したり、ムオルに抱いた自分の感情が分からないことがあります。だから最初は素直になれず、ムオルを遠ざけてしまいますが、その気持ちをじょじょに理解して行き、ムオルを想うようになるのです。
 そういった描写がかなり多いので、読むときはメリアがどのような気持ちでいるか意識しながら読むと、よりムオルに感情移入ができると思いますよ。
 囚人のジレンマを考案した人にメリア、という人がいますが、名前のモデルでしょうか?

 カラス
 ムオルを焚き付けるお助けキャラと日常パートを補う役割と同時にメリアに関する部分で重要な鍵を握った役割を持つ人物でもあります。飄々とした掴みどころの無い性格が不気味に感じることもあります。カラスのイラストをネタとして見るとかなり笑えるのですが、本文を読む過程で見たときは薄気持ち悪い印象を抱きました。

 タイトル。
 シュガーダーク、直訳すると砂糖闇。
 シュガーには甘くするという感じの意味があるので、闇を甘くする、とか闇を受け入れやすくするみたいな意味合いが込められているのかもしれません。
 このタイトルはムオルに対するメリアへの気持ちであり、作品そのものを表す言葉に最適です。最初、表紙絵を見たとき、振り向くメリアの上に重なるようにしてピンク色のタイトルが大きく描かれていて、大胆なデザインにしたものだと思ったのですが、本文を読んでから表紙を見るとなるほど、これは大した命題ではないかと感心したものでした。シュガーダークとはこの作品のためだけににある題名です。
 まあ、俺の憶測だったり深読みだったりするかもしれません。
 ただ、世界観を語る上でネーミングってのは重要なポジションにあると思いますので。

 角スニの銘打つ「ラノベを変える。シュガーダークが変える」というものはあながち間違いじゃないが、この作品がラノベを変えるトリガーであるかもしれないが、本質的には角川自体がラノベを変えるのだろうと俺は思う。
 6年の間を開けて受賞した大賞はハルヒの後続とあって期待度ともに注目度は高い。しかし、最近主流の萌えを押し出した作品群とは方向のちがった作品を大賞に選出しました。
 以前、電撃大賞でも紅玉いづき作の「ミミズクと夜の王」がイラストなしで全然萌えに傾倒していないと言うことで、社会の流れと反していて斬新だ、と騒がれたことがあります。社会の流れと反している、それがミミズクだとしたら、シュガーダークは社会の流れから逸脱しているのだと思います。作品の内容としては萌えとは程遠いのですが、一応ラッキースケベなどがありラノベ的で、イラストも完備。というか、そういった断片的なところでラノベを語るのは難しいので、端的に具体的に言うと「ラノベっぽい」です。若干、童話っぽいと仰った方もいますが、俺は童話っぽいとは思いませんな。これは「ラノベっぽい」
 大賞だけど、ハルヒみたいにキャラで押し出しているわけじゃないよってことです。いや、ハルヒはハルヒでキャラだけじゃないことも語りたいのですがここは自重。ハルヒと比べるとしたら、才能の部分だと思います。ハルヒのような笑える一人称を書くのは才能があるとしかいいようがない。あの文体を真似しても、それは劣化ハルヒにしかならないような独特なものです。対してシュガーダークは設定やストーリーなど始まりは閃きであれど、そこからは磨かれた感性と積み上げた努力があると思います。これはハルヒの谷川さんが努力してないと言いたいわけではなく、誰でも書くことができそうな小説の上を行く作品だと言いたいのです。誰でも書けるワケではありませんよ、だって閃きだけは誰にも真似できませんから。つまりは技術が素晴らしいと言うこと。
 だからそういう面で角スニはこの作品を大賞以外にはできなかったのかもしれません。この作品を入れる枠に、優秀賞は小さすぎる。で、あれば、大賞しかない、と。
 こうして、時代の流れと離れた作品が大賞に選出されました。
 俺はこういう作品が角スニ大賞に受賞してくれてうれしい。なぜって? 角スニと言えば、母体は角川書店。作品宣伝のためならメディアを総出させるではないですか。だからシュガーダークも世に知らしめられて有名になってくれると予想しています。
 現在、萌えはやや腐食気味です。萌豚、と呼ばれる第四次オタクの露出が激しくなる中(今までオタクとされてこなかった人たちまで、昨今の萌えブームでその存在が顕になった)、ストーリー上等の作品群はどんどん数を減らしていきました。しかし、萌えもブームのピークを越えてきている、むしろ萌えでいることに限界を感じてきているような気がします。萌えの限界が恐らく一部の萌豚どもに理解され始め、ストーリーをないがしろにしない作品を求めるようになってきたのではないでしょうか。根拠として上げるなら、アニメ化される作品にラノベが多くなってきたことを上げます。ラノベと言えば、ストーリーが重要なのですから、見た目や萌え要素だけに釣られた萌豚どもには似つかわしくない。そのラノベのアニメ化が増えると言うことは、やはりストーリーが重要視され始めた、と言うことに当たるのではないでしょうか? そんな中で、シュガーダークは名誉と話題性のある角スニ大賞を受賞されたので、一般人も取り巻くハルヒブームならぬシュガーダークブームを起こして欲しいものです。
 ……だが、シュガーダークの欠点はインパクトのなさと特徴的な部分のなさにありますから、ブームになる要素が宣伝だけってのはかなり心細い。せめて、俺の中だけでもブームにしてやるよ。

 俺のマイブームだわ。

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